私の個人主義

数ヶ月前にこのタイトルの薄い単行本を読み始め、ざっくりと3ヶ月経ったようだ。
韓国育ちの私にはこの個人主義という言葉には馴染みがない。なんとなく、西洋の価値観で少し古く、自分のことにフォーカスをより当てる意味でいい感じは受けられない。だけど、私の個人主義というふうに「私の」がつくと、少し-いやかなりそのニュアンスが変わって伝わったわけだ。
そもそも自分のことにフォーカスするのにさらに私のがつく。
これを読めば、私とはあまり縁がない単語だった個人主義とやらが、「私のもの」になるのかー?
それに、あの夏目漱石だよね。彼の作品は結構読んだはずだーが、彼の作る物語ではなくご本人が登壇して直接お話しされた言葉を記録しているという点も自分の国は愚か他国の歴史を知ることがない自分には単純で幼稚的な好奇心に駆られて読み始めたが、やはり歴史背景の乏しさは本を読み終える時間を果てしなく長引かせた。

本を読み進めると出てくる「掘れるところまで掘り進める」という話が出る。
私の中にはこの概念がまるでないに感じる。そもそも掘るとは何か。反復か?探究研究?なら何をどうするとそれは探究になり得るかわからない。
多少敏感なところにも触れてしまうかもしれないが、韓国ではそのような探究する力は外部からは教えてくれない。本人が上手でその道を進むようになると周りの大人がそれを執拗にサポートする。
大学まで行くとようやく大人の手がかりが薄まる感じがあるがその空白は期待として埋まる。
タネを巻いたので、収穫しなくてはならんというような感じがある。
しかし、私がみた日本ではその形はあまりない。20代でみた日本の子供が必要以上に大人の手によって自分の道を進むような様子はあまり見られなかった(私の見物力不足かもしないが)少なくとも自分が子供を育てる上では子供は自分で考えることができる環境下にいるし、むしろ自分で考えなくてはならなくなる。
何々になるーにはこうするーためには何何が必要だからー自分はこれをするんだ:みたいな思考ができるわけだし、おそらくそれが「掘る」のスタートラインではないかと思う。

自分のスタートラインを探す時期はとっくに過ぎているが、本の内容は当時の青年に向けられた話には限らない。溢れるコンテンツに溺れどこまでも消費されてしまう今の社会で、自分のやりたいことすら考えられない人でいっぱいな今の時代では、
夏目さんの「掘れるところまで掘る」は、青年の内に誰でも済ませる簡単な話ではない。この話には続きもあって、掘り進み切った所で見つけたものなり、ことなり、場所なり、を得てそれを自分の居場所として座り、それを通して自分の個性を発揮し続けていくーのだそうで、そうすると周りのノイズや出来不出来にこだわらず心の底から安心してブレない幸せな人生を歩めるというふうに語られている。

だけど、この掘れるーという行為は具体的に考えると、何かの壁、試練、挑戦、反抗、摩擦といったものにぶつかってそれを超える行為を掘るとみるのではないかと理解することもできる。
彼自身も英国へ留学し何かしら違うという、自分と環境のずれを得てから、「そしたら自分の本当のいるべき場所は」を考えるようになりそれが「自己本位」に繋がっているようにも見える。
単に、何も壁や試練がなく、最初から上手行き、そのまま最高になりました、というようなストーリは聞いたことがないし想像もできない。(あまり聞きたいとも思わないかも)
その壁たるものは、自分の制作する日々毎日大量に発生する。
ということは、おそらく自分としてはまだ掘っている最中なのだと思える。
「掘れるところまで」を得て「自己本位」を得る道は自分には極めて難しそう。残念。笑
自分の本当のいるべき場所を見つけたら、それは、他人の居場所を尊重するということも理解できる。
それは、その人も、掘れるまで掘り続けてやっと見つけたものなんだから、それを尊重しないわけにはいかない。
相手を尊重し、自分も尊重されるというのが理想の個人主義の始まりということなら、
えーっと、私まだ掘っていて、スコップ作業が、、いつ終わるかまだ見れなくて。相手ーおー相手をみると、相手も掘り終えてた人よりは掘っているように見える人が多い。おそらく、自分と似たもの同士を見がちかなー。コンテンツと物がありすぎている今の人にはますますこの根気よく掘り続けるというのは、難しい。時に、掘るのはいくつも持っていなくてはならないという圧迫さえある。

やはり自分には個人主義を理解するのはまだ難しそうだ。🐦‍⬛

しかし、この演説の空気、特に集中力で静まった会場の空気、そこに座って熱心に聞いていただろう若きエリート達の眼差し、笑い声、夏目さんの遠慮しがちな演説の投入部分(いくつかお約束セルフが存在するかのようだった)、盛り上がり、拍手、彼の熱い国と生徒を愛する心などはとてもとてもよく伝わる。
長くかかり、歴史背景は難しく、漢字も今と違うものがあったり、かなり苦労して読み終えた大事な本だ。
ありがとうございました。

2026.5